【第12講】「書いてないことはやっていない」— GMP文書管理の鉄則とデータインテグリティ
【Lv.2 実務】第3部:文書と記録
講義概要
「ちゃんと作業はやりました!」と口頭でどれだけ主張しても、GMPの世界では『記録がない=やっていない』とみなされます。査察官を納得させ、データの信頼性を保証する文書管理の絶対ルールをマスターします。
文書管理の失敗は、ほぼ必ずデータインテグリティ問題へつながります。
文書体系はポリシー→SOP→指図書→記録の階層で見てください。現場に旧版が残る、電子と紙で版が違う、訂正が修正液、これらはDI指摘の定番です。版管理の監査をエリア単位で回してください。
背景
GMP省令第8条(手順書等)および第20条(文書及び記録の管理)により、製造管理・品質管理に関わるすべての業務は事前に文書化され、結果は改ざん不能な形で記録・保存されなければなりません。
参照の起点は「GMP省令第8条・第20条 / ALCOA+原則 / 事例集」です。条文番号は改正で動き得るため、運用判断の直前に現行省令・通知本文を確認してください。
誤解しやすい点: 電子化すればDIは自動的に守られません。権限・監査証跡・同時記録の設計が必要です。
詳細解説
- 【1. GMP文書体系のピラミッド構造】 最上位の『品質方針・マニュアル』から、第2階層の『規定・基準書(製造・品質・衛生)』、第3階層の『標準作業手順書(SOP)』、最下層の『指図書・記録書・ログブック』へと段階的に具体化されます。 ここでの要点は「1. GMP文書体系のピラミッド構造」を、担当者が説明できる粒度まで落とすことです。記録項目がその説明を支えるかも併せて見てください。
- 【2. データインテグリティの金科玉条:ALCOA+の原則】 データは、①Attributable(帰属性:誰が)、②Legible(判読性:読める)、③Contemporaneous(同時性:その場で)、④Original(原本性:生データ)、⑤Accurate(正確性:誤りなし)を満たし、さらに完全性・一貫性・永続性・利用可能性を維持しなければなりません。 「ALCOA+の原則」が崩れると、後工程の逸脱や出荷判断の曖昧さにつながります。責任者と承認者の役割分担を明示してください。
- 【3. 記録の書き方・訂正のルール】 鉛筆や消せるボールペンの使用は厳禁。訂正時は二重線を引き、訂正理由を記載して訂正者のサインと日付を記入します。修正液や上書きは改ざんとみなされます。### 4. 現場への実装ステップ(本講固有) まず自社の関連SOPから「1. GMP文書体系のピラミッド構造」に対応する条項を抜き出し、現場の実作業との差分を赤入れしてください。差分ゼロなら、教育記録の理解度確認へ進みます。---
チェックリスト
- 現場点検の際は、次を優先的に確認してください。
- 作業と「同時」に記録が記入されているか?(メモ書きからの後日転記を禁止しているか)
- 現場で使用されているSOPが最新の承認版であり、旧版が確実に回収・破棄されているか?
- 電子記録システムにおいて、個人別ID/パスワード管理と監査証跡(Audit Trail)が有効化されているか?
- 記録の保管期間(有効期間+1年、最低5年間等)がルール通り守られているか?
- 本講(第12講)の学習目標が、関連SOPの目的欄に反映されているか?
事例
NG事例: 【NG事例】現場の裏紙に数値をメモし、終業後にまとめて記録用紙へ清書して裏紙をゴミ箱へ捨てた。査察官に生データ破棄と同時性欠如(DI違反)を指摘された。
模範事例: 【模範事例】秤量機や測定器からの自動プリントアウトレシートを直接バッチ記録に糊付けし、割印・署名を行う手順を徹底して生データの完全性を担保した。 旧版SOPの放置は、意図せず不正手順を正式化します。版管理と現場の表示一致を確認してください。
実務への教訓
記録は未来の自分と会社を守る防弾チョッキです。「事実を、その瞬間に、ありのままに」残しましょう。
現場の掲示SOPと現行版番号が一致しているか、今日1エリアだけ見てください。
規制参照: GMP省令第8条・第20条 / ALCOA+原則 / 事例集
関連講座
確認クイズ(3問)
Q1. データインテグリティ(DI)のALCOA+で「A」の一例は?
- Attributable(帰属性)
- Advertising(広告)
- Arbitrary(恣意)
正解: Attributable(帰属性)
Q2. 記録訂正の正しい扱いに近いのは?
- 二重線で消し、理由・署名・日付を残す(修正液禁止)
- 修正液で塗りつぶす
- 後から別紙に書き直して原本を破棄する
正解: 二重線で消し、理由・署名・日付を残す(修正液禁止)
Q3. 電子記録のDIで重要なのは?
- 権限管理・監査証跡・同時記録などの設計
- 電子化すれば自動的にDIが守られる
- パスワードを全員で共有する
正解: 権限管理・監査証跡・同時記録などの設計
本記事はAIおよび専門規制情報に基づき作成されたインテリジェンス・教育コンテンツです。正確な実務適用については必ず最新の厚生労働省令、PMDA・PIC/S・FDA等公式ガイドラインをご確認ください。